動物病院の役目は「動物が病気になったら行くところ」だけではありません。
「病気にならないため」に、「より良い生活を送れるよう」に、ご相談いただくところでもあります。
飼主様が「知らなかった」、「やっておけば良かった」と悲しい思いをされることがないよう日々の健康管理のお力になりたいと考えております。
ワクチン(予防接種)
・狂犬病ワクチン
狂犬病ウイルスは犬だけでなく、人を含むすべてのほ乳類に感染し、いちど発症するとほぼ100%死に至ります。
日本は現在のところ清浄国ですが、海外からの侵入を防ぎ流行をさせないために、日本では年に1度の接種が法律で義務づけられています。
・混合ワクチン
生後1~2カ月頃までは、母犬のお乳(初乳)によって体内に取り込んだ免疫(移行抗体)によって、子犬の体はウイルスなどから守られています。しかし、その母親譲りの免疫力が薄れてくると、いろいろな病気にかかりやすくなります。そこで、母親からの免疫に代わって、それらの病気から子犬を守るのがワクチン接種です。ワクチンで防げる犬の病気には、「犬ジステンパー感染症」「犬パルボウイルス感染症」「犬アデノウイルス1型(伝染性肝炎)」「アデノウイルス2型感染症」「犬パラインフルエンザ感染症」「レプトスピラ病(血清型8種類)「犬コロナウイルス病」があります。これらは混合ワクチンになっていて1本のワクチンで予防することができます。ワクチンは生後2ヶ月前後から、3-4週間の間隔で、2回または3回接種します。その後は年に1回の追加接種をおこないます。
フィラリア予防
フィラリア症(犬糸状虫症)とは、蚊によって媒介されるフィラリア(犬糸状虫)という寄生虫によって起こる病気です。犬の心臓や肺の血管に寄生し、呼吸器や循環器、泌尿器にも障害をもたらします。犬だけでなく、猫にも感染することがあります。フィラリア症の初期症状は軽い咳が起こる程度ですが、進行すると、失神、腹水、胸水などの重い症状へ変化します。紅茶やコーヒーのような色の尿が出たり、急に元気がなくなる急性症状が起こることもあります。症状が進むと、ほとんどの場合、右心不全という状態になって死に至ります。
フィラリア症は発症すると治療が難しい病気ですが、簡単な投薬で予防することができます。そのため、予防がとても重要です。
各種の予防薬で感染を防ぐことができます。(正確には、犬が蚊に刺されるのを予防するのではなく、蚊から刺されたときに皮膚に入ってくるフィラリアの幼虫が成虫に達する前に駆除する薬です)。予防時期は毎年、蚊の活動開始1カ月後から活動終了1カ月後まで(関東では5月から12月まで)、予防薬を投与します。感染してから予防薬を始めるとショックを起こすことがあるので、生後6カ月以上の犬に予防薬を与えるときには、すでにフィラリアにかかっていないか、予防時期の初めに検査が必要です。予防薬は毎月1回、口から飲ませる薬のほか、おやつ(チュアブル)タイプ、皮膚に直接つけるスポットタイプもあります。どの方法がよいか迷われた場合には、お気軽にご相談ください。
ノミ・マダニ予防
ノミは犬の体に寄生する代表的な外部寄生虫です。ノミが犬の体に寄生すると、かゆみのために引っ掻いたり咬んだりして皮膚炎を起こします。ノミの唾液に含まれる物質によってアレルギーを起こすこともあり、背中から腰、尻尾のつけ根にかけて脱毛し、赤いブツブツができます。また、大量にノミが寄生すると、吸血されて貧血を起こすこともありますし、条虫(さなだ虫)という内部寄生虫など多くの病気を媒介します。犬だけでなく、飼主様を刺すこともあり、激しいかゆみや皮膚炎を起こすことも少なくありません。
犬に寄生する一般的なダニはマダニです。マダニは草むらなどに潜み、散歩などで犬の体にくっついて血を吸います。耳や顔など、皮膚が薄くてやわらかい部分に好んで寄生します。体に寄生すると激しいかゆみを伴いますが、さらにやっかいなのは、マダニが「バベジア」という寄生虫(原虫)や細菌などを媒介することです。特にバベジア症候群は犬の赤血球を破壊し、生命に危険を及ぼす危険性もあるので、ノミと同様、しっかりと駆除・予防対策を行う必要があります。ノミ・マダニなどの外部寄生虫は口から飲ませるタイプのお薬や皮膚に直接つけるスポット剤で駆除が可能です。
避妊・去勢
避妊・去勢手術は、望まない妊娠を防ぎ、不幸な子犬を増やさないという目的があります。しかし、不妊手術のメリットはそれだけではなく、発情期の性的なストレスの軽減、問題行動の予防や改善、さらに性ホルモンに関係する病気や遺伝的な病気の予防などの効果もあります。
当院では生後7ヵ月齢ごろの手術をおすすめしています。まずはお気軽にご相談ください。
デンタルケア
人と同様に犬も歯(口の中)を健康に保つことが重要です。しかし、3歳の犬の約60%に歯周病があるといわれています。歯石は多くの細菌が存在し、口臭の原因となったり、歯肉の炎症さらには全身疾患につながることがあります。いちど歯石ができてしまうと、全身麻酔下での歯科処置が必要となるため毎日のデンタルケアが大切です。
歯磨きができることが理想的ですが、それが難しい場合には口腔内の清浄剤やデンタルガムなどの方法もありますので、ぜひご相談ください。
マイクロチップ
マイクロチップは、直径2㎜、長さ約8~12㎜ほどの大きさで円筒形をしており、外側は生体適合ガラスで覆われています。それぞれのチップには、世界で唯一の15桁の数字(番号)が記録されており、この番号を専用のリーダー(読取器)で読み取ることができます。犬を海外から日本に持ち込む場合には、マイクロチップなどで確実に個体識別をしておく必要があります。また、迷子や地震などの災害、盗難や事故などによって、飼主様と離ればなれになっても、マイクロチップの番号をリーダーで読み取り、データベースに登録された情報と照合することで、飼主様のもとに戻ってくる可能性が高くなります。
マイクロチップは通常の注射針より少し太い専用のインジェクター(チップ注入器)を使って体内に注入します。痛みは普通の注射と同じくらいといわれており、鎮静剤や麻酔薬などは通常は必要ありません。
体重管理(肥満)
人間同様、犬にとっても肥満は万病の元であり、心臓や内臓に負担がかかります。その犬種の理想体重よりも15%以上オーバーしていたら、「肥満」と言えます。犬の脇に手を当てても肋骨に触れることができなかったり、背骨をさわることができなかったりしたら太りすぎです。
肥満改善の手段として、やみくもに食事の量を減らすのは健康上おすすめできません。まずはなぜ太ったのか、その原因を探り、計画をたてることが大切です。また、運動量を急激に増やす方法は、太りすぎている場合、心臓や関節に負担がかかったり、足腰を傷めたりすることがあります。食事コントロールで少し体重を減らして体を軽くしてから、徐々に運動量を増やしましょう。
当院は健康のための体重管理をお手伝いしております、ご相談ください。