内視鏡検査の特徴について
内視鏡検査および治療の最大の特徴は、消化管の中を鮮明に観察できることや、外科手術に比べてとても低侵襲に消化管の検査・処置をおこなえることです。動物と飼い主様の負担が少なくすむ「優しい」医療であるといえます。
当院はCCDカメラによるビデオスコープおよびハイビジョン対応のプロセッサー・モニターを導入いたしました。旧来のファイバースコープに比べてより高画質となり、さらに正確な診断・処置が可能です。また、数種類のサイズのスコープを用意し、猫から大型犬まで幅広い対応が可能となっております。
・内視鏡検査は全身麻酔下でおこないます。
そのため、動物の状態により検査が実施できない場合があります。
① 生検検査の場合
慢性の嘔吐や下痢、血便などで消化管に問題がありそうな時、内視鏡検査をおこないます。食道・胃・十二指腸の上部消化管や結腸・直腸の下部消化管の粘膜を観察し、必要に応じて生検(小さい組織をとること)をすることができます。この組織を病理検査することによって、がんや慢性腸疾患を診断することができます。
【内視鏡で診断できる疾患の例】
食道: | 食道狭窄・食道内異物 |
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胃 : | 慢性胃炎・胃ポリープ・胃潰瘍・胃腺癌・消化器型リンパ腫・胃内異物 |
小腸: | 炎症性腸疾患(IBD)・消化器型リンパ腫・リンパ管拡張症・小腸腺癌・十二指腸潰瘍・十二指腸内異物 |
大腸: | 炎症性腸疾患(IBD)・消化器型リンパ腫・大腸腺癌・結腸直腸炎症性ポリープ |
症例:炎症性腸疾患(IBD)のミニチュア・ダックスフンド
患者さんは、6歳の雄のミニチュア・ダックスフンドです。
数ヶ月前からの周期的な嘔吐や下痢、食欲不振を主訴に来院されました。かかりつけの病院で食事療法や対症療法をおこないましたが、改善しないとのことでした。
まず、糞便検査・血液検査・X線検査・超音波検査をおこないましたが、原因となる異常所見はありませんでした。
そこで、内視鏡検査をおこないました。
び漫性の胃腸疾患が疑われましたので、十二指腸・胃の組織を採取しました。
採取した組織の病理組織検査では、リンパ球や形質細胞による慢性炎症の所見が認められました。
以上の結果より、炎症性腸疾患(IBD)と診断し、ステロイドを含めた処方にて治療を開始しました。その後、症状はおさまり、良好な状態で1年以上経過しています。
炎症性腸疾患(IBD)は未だ解明されていないことも多い慢性の胃腸疾患のため、この病気に特有のお薬を処方したり、治療が長期にわたることが多くあります。そのため、根拠に基づいた診断が極めて重要となります。嘔吐や下痢は通常の胃腸炎でもみられますので、めやすとして適切な対症療法を3週間以上続けても改善が認められない場合は、内視鏡検査をおすすめしています。
② 消化管内異物の場合
動物は時として食べ物でないもの(異物)を飲み込んでしまうことがあります。これらは嘔吐や下痢の原因になったり、腸閉塞をひきおこして命にかかわる場合もあります。内視鏡検査は主に食道や胃の中にある異物を確認し、多くの場合はそのまま摘出することができます。
例えば胃の中にある異物の場合、吐かせる処置をしても出てこない時には開腹手術で異物を摘出しなければなりません。手術後は通常3日~7日の入院が必要になります。しかし内視鏡で異物が摘出できた場合には、開腹手術をする必要はなく、0日~3日で退院することができます。
【消化管内異物の例】
種(梅干し・桃・マンゴー・プラム)・竹串・つまようじ・ゴムボール・スーパーボール・プラスチック片・サランラップ・キャップ・ペットシーツ・靴下・ゴム手袋・タオル・輪ゴム・ボタン・コイン・手羽元・鳥の骨・縫い針・画鋲・ひも・糸・人形・ぬいぐるみ
内視鏡検査について気になること、不安なことがありましたらお気軽にご相談下さい。
かかりつけ動物病院(ホームドクター)から当院を紹介された飼い主様へ
当院はご紹介いただいたかかりつけ動物病院とともに協力・連携して診療をおこなう方針をとっております。
内視鏡検査のために当院を紹介された患者様につきましては、紹介内容に関する診断・治療のみをおこなっております。
予防医療(ワクチン接種、フィラリア予防、ノミダニ予防)や紹介内容に直接関係のない一般診療につきましては、かかりつけ動物病院にておこなっていただくこととなっておりますので、ご了承下さい。